続きは、社長室で。
拓海の秘書として生きられる権利を、貰えたのだから・・・
走行中の車内では、特に何も話すコトはないけれど。
無言の空間が居心地良いと思えるのは、いつ以来だろう?
何も話せなくても良い…、貴方の傍にいられるのなら――
「ッ・・・」
それでもホワイトムスクの香りが花舞う空間には、ドキリと高鳴る鼓動。
感情を押し込められずに、車外の喧騒を眺めるフリをして彼を捉えた。
今日の社長は、ブラックのオーダースーツが填まっていて。
爽やかなブルーのストライプネクタイは、夏の訪れを感じさせた。
ブラックの重苦しさが皆無なのは、その精悍さゆえだと思う。
スラリとした細身の体躯で、難なく着こなしているのだ。
これからも秘書として、社長のスタイルをチェック出来るコト。
以前は当たり前だったモノが、こんなにも幸せに思えるなんて。
貴方の愛車の助手席に乗れるコト…、秘書として傍にいられるコト。
些細なコトであろうとも、私にとってはすべてが大事なモノばかり。