続きは、社長室で。



拓海の秘書として生きられる権利を、貰えたのだから・・・





走行中の車内では、特に何も話すコトはないけれど。



無言の空間が居心地良いと思えるのは、いつ以来だろう?




何も話せなくても良い…、貴方の傍にいられるのなら――




「ッ・・・」


それでもホワイトムスクの香りが花舞う空間には、ドキリと高鳴る鼓動。



感情を押し込められずに、車外の喧騒を眺めるフリをして彼を捉えた。





今日の社長は、ブラックのオーダースーツが填まっていて。



爽やかなブルーのストライプネクタイは、夏の訪れを感じさせた。



ブラックの重苦しさが皆無なのは、その精悍さゆえだと思う。



スラリとした細身の体躯で、難なく着こなしているのだ。





これからも秘書として、社長のスタイルをチェック出来るコト。



以前は当たり前だったモノが、こんなにも幸せに思えるなんて。




貴方の愛車の助手席に乗れるコト…、秘書として傍にいられるコト。



些細なコトであろうとも、私にとってはすべてが大事なモノばかり。




< 252 / 266 >

この作品をシェア

pagetop