続きは、社長室で。


向かって行く先は、何処なのかを覚えているから不思議なモノで。


その部屋を眼前にして、私の心臓は煩いほどに鼓動を刻み始めた。




スーっと襖を開けば、其処は厳かな雰囲気の広々とした和室――



江戸時代から続く、東条家の家紋が施された欄間と代々受け継がれる調度品の数々。



どの品もあまりに希少すぎて値段などつけられないと、母から聞いている。




「2人とも、やっと来たか――」


だけれど、それ以上に存在感を放つ人物が構えていた。



「えぇ、只今戻りました」


「っ・・・」


此処は東条財閥総裁である、旦那様の部屋なのだ・・・




常日頃は殆ど日本にはおらず、各国のグループ企業を治める旦那様。


こうして会うのは数えるほどで、物凄く緊張してしまう。




部屋中に立ちこめる厳かな雰囲気と、拓海と同じ顔を持つ旦那様。


あまりの居た堪れなさに、襖の側で佇んでいると・・・




「蘭ちゃん、席についてくれる?」


「あっ、ハイ――」


旦那様の隣に座る奥様が笑い掛けてくれて、物凄く安堵させられた。



そうして拓海の隣におずおずと座ると、俯き加減で構えてしまう私。




この状況の意味など、分かるハズもなく――




< 257 / 266 >

この作品をシェア

pagetop