続きは、社長室で。


私のせい――?



「あぁ…、別に何も無ければ、それでも良かったかもしれないが…。

俺とオマエでは、主従関係なんてあり得ない。

お互いを欲して、追い求めていたから――」


「ッ――!」




「だが、そうして関係を崩す事は簡単じゃなかった。

懇意にされている佐々木家を妬む、東条の周りを固めるヤツらの存在。

東条家に受け入れようとした時の、世間の無情さ・・・

易々と感情だけで動く事が、俺には許されなかった…」


「っ・・・」



フッと自嘲する拓海の表情が、あまりにも儚くて、脆さを含んでいて。


涙腺が崩壊したように、涙が次々に流れていく。




「そう内心で嘆いていたのを、親父達は気づいていたんだな。

オマエを秘書にしろと言ったのは、お袋なんだよ」




え…、奥様が・・・?




「“蘭ちゃんを手に入れたいのなら、2人で世間の波に揉まれなさい。

その期限は、拓海が26歳の誕生日を迎えるまで・・・

彼女が辛さを味わおうとも、貴方には一切の手出しは許さない。

あくまで社長と秘書という位置関係で、蘭ちゃんに接しなさい。

それでもなお、貴方の傍にいられれば認めるわ――”とな…?」



「っ・・・」


止め処なく溢れる涙は、拓海の表情を歪めてしまう。




どれほど泣こうが、留まる所を知らないように・・・




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