続きは、社長室で。


「それじゃ、今日はありがとう。」


後藤社長の専用車の前へと、到着すると。


後部座席へと乗り込んだ社長が、笑顔を見せてくれた。




「いえ、こちらこそ。

ありがとうございました。」

社長が穏やかな表情で、一礼をしたあと。



「本日は、ありがとうございました。」

私も続いて、平身低頭でお辞儀をした。



「フッ…、こちらこそ。」


後藤社長の笑みを見ると、自然と笑顔になれる。


・・・不思議だね、本当に。




「佐々木さん、今度は会社に行くね――?」


「はい、是非ともお待ちしております。」

笑顔で答えて、また軽く一礼をした。




「では、近い内に……」


この言葉と、その日一番の笑顔を残して。


後藤社長を乗せた車は、走り去って行った。





サーッと頬を掠める、穏やかな風。



走り去ったあとも、収まらない不安。





これらがすべて、私を取り巻いていた――







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