花火


望んでいたその言葉。


本当に聞けるなんて思ってなかった。


私の思いがいっぱいにつまった涙が頬を伝った。


「なっちゃん?」


「うれしい…」


「うん…俺も」


隼人はそっと両腕で私を包みこんだ。


宝物に触れるみたいに私を抱き締める隼人の手が心地良かった。


思っていたより広い肩幅。


甘い香り。


これからずっと、私がこの一瞬を忘れることはないだろう。


『いっそ時が止まればいいのに』


ありがちな言葉が心を駆け巡った。


大好き。


大好きだよ。


隼人…、大好き。


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