恋愛成長記
ある哲学者の格言により。
ある哲学者ワイアットは言いました。
『男は目で恋に落ち、女は耳で恋に落ちる』と。

じゃあ何か?
男は女を見た目で選んで、女は皆声フェチだとでも言うのか?
・・・そう胸中で毒づき、片肘を付いて教壇で色恋沙汰を語る独身教師に白けた視線を送る。その間も、周囲では女子がそれに便乗して、キャァキャァと前後左右の友人達と自分の色恋話に華を咲かせる。
・・・・一体今は何の時間だったっけ?
・・・・現国の授業は何処に行ったんだ?
あきれ返って溜息を付くと、一瞬隣の席に固まっていた女子達から鋭い視線を浴びた・・・・気がする。

教室の彼方此方でグループが出来上がっているというのに、私の席の周りには人避けがあるのかと思うほどに人気が無い。
―――――――――――――――――――――――――3年だ。
その年月を経ても未だクラスに馴染めていないのは、きっと私だけだろう。
親に言われて通いだした、大学付属の私立の女子中学校。
別に私が行きたいといったわけじゃない。親が自分の出身校に娘を入れたがったから。
それに眼鏡だって視力が悪いからしてるわけで、髪の毛が黒いのだって地毛だからだし、派手な髪飾りだって、校則に反するからしてないだけだ。
ただそれだけのことで『ジミ子』なんてそれこそナンセンスなあだ名を付けられた挙句、陰険な虐めにあっているのはおかしい。
・・・・私があんた達に何したって言うんだ。
今までだって、彼女たちに対して横柄な態度を取ったことも無いし、目立った発言も行動もしていない。
・・・・否、しなさすぎたのかもしれない。
目立ち過ぎても、それこそ目立たすぎても、『的』にされる。
ああ、何て生きにくい世界なんだろう。

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