Night Walker

素っ頓狂な声を出す舞に津那魅はにっこりと笑ってうなづいた。


「まさか、文字通り夜しか現れないと思っていた……？」


津那魅の問い掛けに思わずコクンとうなづいて、舞は、


「もしかして……違うのですか」


と、不安気に津那魅に問い掛けた。

それに対し津那魅は軽くうなづくと始終笑顔のまま、


「ん。意外と普通の人間と変わらないよ。医者もいれば教師もいるし……私の友人は、新聞記者ですよ……ん……どうかしましたか？　舞ちゃん？」


ポカンとほうけた舞を見て、津那魅は舞の顔を覗き込む。

人間離れした津那魅の美貌に、高鳴る胸は治まらぬまま、戸惑いあぐねる。

そんな様子を見て、津那魅はふと、何かに気付いて舞から離れた。


「済みません。そんなつもりは無かったのですが、どうやら魅了の力を使いそうになったようです。もう覗き込んで見る様な事はしませんから、安心して下さい」


そう言って津那魅は舞から離れると、冷え切った紅茶を一気に飲み干した。

だが、舞の心は高まったままで、一向に治まらない。

津那魅でさえ分からなかった誤算がそこにはあった。

舞は、津那魅に魅了された訳では無い。

真実は、もっと後に知れるもの。

津那魅が事の次第に気付いた頃には後の祭であった。





「色々、誤解していたみたいで恥ずかしいです」


落ち着いた舞が申し訳なさそうに呟いた。

その言葉に、津那魅は微笑することで答えると、


「確かに舞ちゃんが怯えてしまう様な輩もいます。でもそれは一部の者達で、多くは人と共存しています。人の中にも犯罪に走る者が居るでしょう？　それと同じです」


そう諭す様な言葉で、舞に語りかけた。


「そう言う私も、彼らと同類ですけどね」


なにげに言う津那魅の言葉を舞はスルーさせようとして、「えぇっ！？」と、驚きの声を上げた。

本当にびっくりする事しか言わない人だと思うと、舞はソファーにズルリと落ち込んだ。


「見えません……。とても綺麗な男の人だとは思いますが、貴方がNight Walkerだなんて……」