月と太陽の事件簿5/赤いランドセル
「あなたが柏木教授を恨んでいるのは自分の研究を横取りされたからだそうですね」

そうだ。

その通りだ。

今朝、破り捨てた論文の中にも、彼が考えた説がいくつもあった。

「考えようによっては、舟本さんが被害者と言ってもいいはずです。なのにそれを主張する機会を逃していいんですか?」

月見の言葉を、舟本は頭の中で何度もくり返した。

そうだ。自分こそ研究を盗まれた被害者なんだ。

わざわざ法を犯す必要などなかったのだ。

「舟本さんの敵である柏木教授はもういませんよ。」

月見の言葉は舟本の思考の中に次々と入り込んでくる。

「舟本さん、あなたの正当性を法廷で争う気はありませんか?」

この言葉が決め手となった。

「わかりました」

舟本は決意した。

「すべてを話しましょう…法のもとで」

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