こゆび
聞いていた蒼井も、静かになっていた。

「だから、蒼井、お願い」
「わかったわ」

それと同時に、翠の気持ちも分かってしまった

(幸助の事を、しまい込んでただ一心に信じるために)

「それと、蒼井」

「何」

「みんなにも、言っといてくれないかな」

「うん」

(翠は、今とても苦しんだ)

「じゃあ、翠」

蒼井は、帰ろうとする翠をとめて

「あたしも、一つ約束させて」

翠は、もう一度蒼井に向き直った

「何」

「幸助の事、絶対に忘れず、信じてやって」

一瞬の風が吹いた、

「わかった」

そういい残し、翠は屋上をあとにした。

一人残った蒼井は、壁に寄りかかり泣いていた。
翠の思いに…

何も出来ない自分に…

ただ泣くしかなかった
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