切恋バスタイム(短編集)
●If she were in a dream
 あのダリアの花のような笑顔が、何故自分のものではないんだろう。あの華奢な肩を抱いているのが、何故自分の手ではないんだろう。そんなことばかり考えているから、あの子の隣に居る男のことが、どうしても気に食わなかった。

 同じ文学部だから、斉藤立花(りつか)とは、度々話すことがあった。親睦会で、酔い潰れた同級生を介護してやっている姿に好感を持ってから、共通の趣味である天体観測について語り合ったり、課題の情報交換をしたりするような間柄だった。

 自分では、脈アリなんじゃないかと自惚れていた。でも、あの子は既に、大学に入る前からあいつの彼女だったらしい。理学部の如月謙一と、二年程付き合っているようだった。

 女ってのはやっぱ、理系の頭が切れるお洒落な男の方が良いのか。古典文学の研究に狂ったように打ち込んで、地味に夜空を観察してるようなダサ男になんて、興味は持たないよな。まぁ、変えようだなんて、思わないけど。



「あ、皆月(みなづき)君!」



 聞こえた声に、肩が跳ね上がる。背の低い女の子の傾向に逆らった、意外と落ち着いたトーン。それを聞いただけで、誰に呼ばれたのかが分かってしまうのだった。
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