魔女の瞳Ⅴ
特に今の代の出碧の当主はなかなかの策士らしく、よその家系の亜吸血種を支配下に置くなど、強力な手駒を引き入れて、かつてなかった勢力を誇っているとか。

もし戦う事になった場合、怖いのは出碧自身よりもその『狗』達だ。

加えて出碧自身の能力も性質が悪いらしい。

人間、人外例外なく、精神を拘束できる能力の持ち主なのだとか…。

考えるだけで相手をするのが億劫だ。

つくづく、欲の浅い相手で助かったと思う。

…まぁそんな訳で私は亜吸血種に対してはその程度の認識しかなく、こちらから手を出そうとも考える筈はなかった。

私だって戦闘狂という訳じゃない。

何百年も魔女狩りの時代から殺し殺されの生活を続けていると、そろそろ平穏に人間のふりして暮らしたいな、とか。

過去の因縁も忘れて、そんな風な心境になる事もあるのだ。

あれだけ人間を憎悪していた私としては、ちょっと嘘みたいな話だけど。


< 5 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop