tone
『ちょっと、奏矢って誰!?』




奏矢……。




その言葉を聞いただけで胸が苦しくなる。





一体誰なの?




美唄歌さんは何も言わず、通りすぎた。




『お祖父様、“奏矢”と言うのは誰ですか!?』









『………音崎 奏矢(ネザキ ソウヤ)。昔、歌音と住んでいた音崎財閥の御曹司だよ。』




音崎……奏矢…?




あのお母様が言っていた音崎財閥の?





その人に会えば……









記憶が戻るかもしれない。




『お祖父様、あたしを音崎財閥に住まわせてください。』




『なぜ?』



『あたしは早く記憶を戻したいんです!!!

早く思い出して、美唄歌さんとも分かり合いたい。』









そのためには昔の環境に戻らなきゃ。




『分かった。音崎財閥に問い合わせてみよう。』




『ありがとうございます。』




これでやっと、




一歩進めた気がする。




そしてあたしはお祖父様の部屋を出た。




この時、あたしがあんな事を言わなかったら、









奏ちゃんは辛い想いをしなかったかな?





次の日、あたしは音崎財閥へと引っ越した。



これが奏ちゃんとの、

再会だった。



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