キヨツカ駅改札口にて

6の改札口






世の中には様々な人がいます。
短気な人、気長な人、親切な人もいればそうでない人もいる。
駅改札口も、もちろんそうです。
たくさんの人々が行き交うここは、そんな世界の縮図の1つなのだと思います。


「あっ」


ちゃりーんと音がしたかと思えば、朝の通勤時間、最も人々が忙しなく動く改札口で、女の方が小銭を落としてしまいました。
1つ落ちたのを皮切りに、ばらばらと散らばっていく小銭たち。


「大丈夫ですか」
「ああ、すみません」


一緒に拾いながら、行き交う人々の足元ばかりが目に映りました。
誰も立ち止まらないのです。
仕方がないかもしれません、皆様、お急ぎなのですから。
そんなことを思いながらも拾い続けていると。
1つ、2つと、足を止めた靴。


「はい」
「気を付けてな」
「本当にすみません」


学生さんの女の子と、スーツを着た呆れ顔のおじ様が、それぞれ拾い集めた小銭を女の方に手渡していました。


「ありがとうございました」


ほっとしたように笑みを浮かべた女の方に、おじ様はこう言ったのです。


「困ったときはお互い様だよ」


女の子も軽く笑って頷いてから、三人のお客様は、改札を抜けていかれました。

世の中には様々な人がいます。
ここはやっぱり、そんな世界の縮図の1つで、ときどきそんな、人々の優しさが垣間見える場所なのです。





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