戦国遊戯
「おい、どうしたんだ?玲子!玲子って!」

慶次が玲子の肩をぐっとつかんで引き止めた。玲子の顔が、青ざめていたのがわかった。

「どうしたんだ!?」

慶次は眉を顰める。玲子はすぐに、いつもの表情に戻った。

「あぁ、ごめん。急に部屋、出てきて」

「………」

慶次は黙ってただ、見つめていた。

「…あの、思ってもいないところで、知り合いにあったから。ちょっとびっくりしただけ」

「本当にか?」

「うん、ほんとに。心配かけてごめんなさい」

ぺこっと頭を下げる。その姿を見て、慶次は少し間を空けてから、軽くため息をついた。

「まぁいいさ。何でもないってんならな」

苦笑いを浮かべる玲子に、慶次はぽんっと頭に手を乗せてきた。

「そう、あんまりなんでも1人で抱え込もうとするな。話せないことなら、話さなくてもいいが、誰かに頼るってことは、別に悪いことじゃねぇんだから」

にこっと笑う慶次の顔に、安心したのか、思わずポロっと涙が出てきた。

「お、おい!どうした?」

慌てる慶次に、慌てて頭を横に振った。

「なんでもない、っていうか、なんで涙!?」

玲子自身も、張っていた気持ちが緩んだせいで出てきたからか、涙の理由がよくわからなかった。

「あはは、ごめんね。ほんとに、何でもない」

ごしごしと涙を拭いて、にこっと笑い返す玲子に安心しなのか、慶次は何も言わずに、ただ、笑い返してくれていた。

「しかし、あの予言者。玲子の知り合いだったとはな」

「うん。私もびっくりした」

学の顔を思い出す。親しくはなかったとはいえ、それでも、クラスメイトだった人物だ。あの変わりようには、少し驚いた。
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