戦国遊戯
「どこの馬の骨とも知れない玲子を、若が拾ってきたときには、嫌な予感がしたんです。そして、若が玲子にどんどんと惹かれているのがわかったから、心底腹も立ちました」

ぎりっとさくらはこぶしを握り締めた。

「なのに、若の気持ちにちっとも気づかない玲子をみて、どれだけ辛かったか、どれだけ憎んだか!玲子さえいなければ!そう思って、殺してしまいたい!そう思ったことだってありました」

涙が頬を伝う。

「だけど、共に暮らすようになって、若と同じように、私も、玲子にどんどん惹かれていきました。玲子が嫌な子だったらどれほど良かったか。でも、いつでも玲子は一生懸命で、向こう見ずなところもあるけど、あのまっすぐなところに、私は惹かれていました」

嗚咽まじりにさくらは言葉を続けた。

「若の玲子への気持ちは、中途半端なものではない。それがわかったから、私は身を引いたのに。なのに…なのになんなんですか!」

ぐしゃぐしゃと頭をかきながらさくらは叫び続けた。

「玲子も若も勝手すぎる!生きて帰ってくる保障なんてどこにも無いのに!」

さくらの目から、ぼたぼたと涙がこぼれる。幸村はそっと、さくらの涙を拭う。さくらは辛そうな表情を見せる。

「私も一緒に、連れて行ってください。これ以上、待つのは嫌なんです」

懇願するようなさくらの顔に、幸村は困惑する。
と、幸村の後ろから声が聞こえた。

「若。つれていってやってください」

「…十蔵」

両手をつき、土下座をしている十蔵の姿がそこにはあった。

「さくらの気持ちは、みな、知っておりました。総大将のことは、俺に任せてください。俺以外にも六郎や小助だっています」

幸村は、ふぅ、と息をつくと、十蔵の肩をぽんと叩いた。

「そんな風に頭を下げるのはやめてくれ」

幸村は頷いて続けた。

「十蔵たちには申し訳ないが、さくらを同行させてもらう」

その言葉を聞き、さくらは深々と頭を下げた。
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