戦国遊戯
***** 玲子's View ****

「う…ン…」

玲子が目をこすりながら体を起こした。幸村はあわてて涙を拭った。一瞬、ぼうっとした後、玲子ははっとして幸村の方へを見た。

「ゆっきー!大丈夫!?」

玲子がぺたぺたと幸村の体を触る。少し顔が熱く感じた。

「どこか痛い?」

心配そうな表情を浮かべる玲子に、幸村はにこっと微笑んだ。

「大丈夫」

そういって、少しの間、玲子を見つめた。玲子は安堵したように、ほっと息をつく。
ほんの少し、2人の間に沈黙が流れた。

幸村は、玲子の手を、ぎゅっと握り締めた。

「ど、どうしたの?」

玲子は、頬を少し赤く染めながら、幸村に尋ねた。

「…玲子、今でも、元の世界に帰りたいと、そう、思うか?」

「え?」

突然の質問に、玲子は戸惑う。

「それは…元の世界に、親も友達もいるもん。帰りたいよ?」

そう、言葉にしたものの、玲子の胸がちくっと痛んだ。

「そう…だな」

幸村の表情に、玲子は思わず俯いた。

「こっちの世界も、私にとっては、とても大切な場所だけど」

口にすればするほど、自分の居場所はこの世界ではないと、思い知らされる。

「でも、私の帰る場所は…」



つらい。



ただ、そう、思った。
元の世界とまったく違ったこの世界が、自分の居場所ではない。
そう、口にしたら、本当に、自分はこの世界にいられなくなるような、そんな気がして。

そこから先を、口にすることができなかった。
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