戦国遊戯
頼りない、わずかに残っている記憶を頼りに、玲子は信長の部屋へと向かった。


一番いいのは、田中くんがいなくて、信長さんだけって状況なんだけど…


部屋に近づくにつれ、足取りが重くなっていくのがわかった。自然と、ため息まで出る。


ほんとに、私に何とかすることなんて、できるのかな。


葛藤の中、気がつけば、信長の部屋の前まで来ていた。玲子の心臓が高鳴り、大きな音を立てる。いざ!と思うが、なかなか襖を開けることができない。手をかけたり引っ込めたりを何度も繰り返した。

「…そこで何をしている」

声がした。何度か、聞いた事のある声。

「…信長、殿…」

玲子はごくりと唾を飲み込んだ。


落ち着け、落ち着け、落ち着け。


呪文のように何度も繰り返す。大きく深呼吸をして、玲子は声を振り絞った。

「お話が、あります」

そう言うと、信長はにたっと笑った。

「ふふ…待っておった。よい、入れ」

そういい終わると、信長の目はすぅっと玲子を冷たく見据えた。思わず鳥肌が立つ。

「は、はい」

手に汗をかきながら、玲子は震える手を必死で押さえながら、信長の部屋の中へと入っていった。
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