戦国遊戯
「さぁ。君にはこれからもっと役に立ってもらわないとね」

そう言うと、玲子のそばにやってきて、ぴたぴたと頬を叩いた。

「あんたの思い通りになんて、動いてなんかあげないんだから!」

キッと玲子が睨みつけると、学はふんっと鼻を鳴らして牢を出る。

「君がどうあがこうと無駄だよ」

そう言い残すと、そのまま牢の鍵を閉めて学達はいなくなった。

「うぅ…」

藤吉郎がうめき声が聞こえる。

「藤吉郎さん!藤吉郎さん!!」

玲子が藤吉郎の名前を呼ぶ。藤吉郎の目が、薄く開かれた。

「藤吉郎さん!大丈夫!?」

玲子の呼びかけに、藤吉郎は頭を押さえながら体をゆっくりと起こした。

「玲子…無事か?」

藤吉郎は、何とか声を絞り出して玲子に問いかける。青く腫れた顔に、口から出ている血。玲子は藤吉郎の姿に、今にも泣きそうな表情になる。

「ごめんなさい。私が関わったりしたばっかりに」

ぼろぼろの藤吉郎の姿が玲子の胸を締め付けた。

「いや、それは関係ない。ここへきたのはわしの意思だ。それに、見つかるようなドジを踏んだのもな」

藤吉郎の言葉に、玲子は涙がこぼれないよう、歯を食いしばった。

「それより。どうしてこんなところに」

藤吉郎に聞かれて、玲子は下を向く。


巻き込んじゃいけない、そう思ったのに。


「ごめんなさい。私…わたし…」

頭を振った。

「玲子が悪いんじゃないだろう?あの男が全ては仕組んでやっていることだ」

「でも!」

玲子が泣きそうな顔で声を上げると、藤吉郎ははぁ、と息をついて言葉を続けた。
< 296 / 347 >

この作品をシェア

pagetop