戦国遊戯
藤吉郎はまだ戻ってこない。祈るような、すがるような思いで、玲子は幸村の手を握っていた。

「待っててね、ゆっきー。すぐに藤吉郎さんがお医者さん、連れてきてくれるから」

必死で幸村を励ますが、幸村の顔色は見る見る青ざめていく。ほんの少し動いただけで、苦痛で顔が歪む。なのに、玲子に心配をかけさせまいと、幸村はできる限り、笑顔を作っていた。

「ゆっきー、大丈夫、大丈夫だから」

泣いてしまうとだめな気がした。
泣いてしまえば、幸村が助からない。そんな気がしたのだ。

玲子は必死で笑顔を作る。幸村の額の汗を拭い、何度も何度も、幸村の手を強く握った。
そんな2人を見守るかの様に、慶次や政宗、兵士達は回りにたたずんでいた。



「こっちだ、早く!」

藤吉郎の叫ぶ声が聞こえてきた。姿は見えないが、もう、すぐそこまで来ているようだった。玲子の表情はぱあっと明るくなる。

「ゆっきー!お医者さん、きたよ!」

そう、幸村に話しかけるが、返事がない。焦る玲子。

「ゆっきー?ゆっきー!」

大きな声で、何度か名前を呼ぶと、幸村はうっすらと目を開けた。

「すまない、玲子」

かすれたような声で、幸村が喋る。

「お医者さんがきたよ、もう大丈夫だから!」

玲子は、幸村の反応があったことに、医者が間に合ったことに、ほっとした表情を向ける。

「眠い…少し、眠るよ」

そう言って、幸村はまた、そっと目を閉じた。

次の瞬間、玲子の中に、嫌な予感が駆け巡っていった。

「だめ!寝ちゃだめだよ!」


ドラマや映画で幾度となく見てきた光景。
こういった場面で、眠いといって寝てしまったら、ほぼ100%の確立で、その人物は死んだ。

玲子の見たものが、たまたまかもしれない。しかも作り話の世界だ。




だけど。
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