戦国遊戯
「玲子!そんな使い方では刀身が折れてしまう!」

幸村に起こられた。もう何度目だろうか。

「だって…」

うぅ、と、下をうつむいた。

「そんなことでは、自分の身すら、守ることができないぞ!?」

言われて反論できなくなる。


川中島へと赴き、戦の準備が整うまでの数日間、幸村に、刀の扱いについて、レクチャーを受けていた。正直、人を傷つけてしまうことが、こんなに怖いと思っていなかった。今までの、素手での喧嘩ではない。殺るか、殺れるか、だ。

「筋は悪くないんだ。後は、思い切っていくだけだ」

「思い切れないよ…」

思わず愚痴がこぼれる。

「何を言っているんだ!?そんなことでは、玲子、お主自身が死んでしまうことになりかねないんだぞ!?」

「わかってる…けど」

どうしても、人を殺すかもしれない。そう思うと、どうしても、足がすくみ、動けなくなっていた。


「幸村、そう、あせらすものではない」

「お館様!」

後ろから、優しい口調で、信玄が話しかけてきた。

「幸村。お主とて、初めて人を切り、殺めたときのことを忘れたわけではあるまい?」

信玄に言われて、幸村は言葉に詰まった。

「まして、玲子は年端もいかぬ女子だ。人を切ることに、抵抗がないほうがおかしいというものだ」

そう言うと、頭をぽん、と撫でてきた。
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