【短編集】現代版おとぎ話

「なぁ。」



掛けられた声にビクッと身体が跳ねた。

どうやら私は集中していてドアが開かれたのに気付かなかったみたい。

わかっていながらもおそるおそる振り返れば、ドアに寄っかかる先生の姿があって、

私は慌てて机の紙をひっくり返す。



「は・・・入って来ちゃだめって、言った・・・じゃないですか・・・!!」



初めての反抗。

本当は、こんなことできる立場じゃないのに。

でも手紙だけはばれちゃいけないから。



「これ、なんだ?」

「え?」



先生が見せてくれたのは、先生が大切だって言ってた箱。

掃除機でひっくり返しちゃって、怒られた箱。

何?

突然約束破って部屋に入ってきて、どうしてそれを見せるの?



「これ、何入ってるかわかるか?」

「わかりません。」



わかるわけないじゃない。

そう思って先生を見つめれば、先生は口角を上げてその箱を開けた。

驚いたけど、リアクションをするにはあまりにも時間が早すぎて。



目を見開いた理由は、

中からバラバラと現れた紙のせいだった。



見覚えのあるピンクの紙。

少し前に使ってた、赤い紙。

最初の方の、水色やエメラルドグリーン。



これ、全部全部・・・



「どうして・・・?」



私が今までに書いた、手紙だ。



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