NOEL(ノエル)

「あらぁ、やっぱり男の子ねぇ。
シューズだけは入らないわ~。

じゃぁ、シューズは33ハーフサイズ、ニーソックスも同じ、ほかの衣装は今言った通りね。
あ、ヘッドドレスも忘れないで。色はブラックよ。」

ベラはセシルの言葉も耳に入らない様子で、次々に傍にいるスタイリストに指示を出していく。

「無理よ。何を聞いても。
ベラは仕事になると何にも聞こえなくなっちゃうんだから。」

セシルの後ろでヘアメイクの仕上げをしていた少女は、鏡越しにセシルに小さくウインクしてみせた。

アップにしたマロンブラウンの髪からは柔らかそうな後れ毛が垂れる。
挑発的な黒い瞳、ツンと上を向いた小さな鼻、少し両端の上がった深紅の唇。

ベラの店のトップアイドル、エミリア・ハートは、髪飾りの最期の一つを付けているスタイリストの手を止めて、おもむろにセシルを振り返ると、後ろからそっと肩を抱き、その耳元に唇を寄せる。

「でもアナタ、ほんとに可愛いのね。
食べちゃいたいくらい。」

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