NOEL(ノエル)

「それじゃ、イントロからお願いします。」

セシルはステージ下方にいるバンドのメンバーに向かってそう告げると、くるりと後ろを向いて瞳を閉じ深く息を吸い込んだ。

やがて、軽快なギターとドラムで、最初の4小節が刻まれる。



次の瞬間・・・



セシルの薔薇色の唇から、まるで妖精の羽が震えるように儚く、透明で、それでいて確かな存在感を持った音が溢れ出した。


「なに・・・かしら・・・これ」

「この音・・・ 声・・・なの?」

「頭が、体が、熱くなる・・・」

「もっと・・・」

「そう・・・もっともっと・・・」

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