明日への扉
先に下山した、柴田と山下だった。




「ねえ。ここ、私達が座ってたトコだよ。」



美穂が切り出してくれる。



「篤史が、ここが寝やすいんだと。お前ら、一番前に行ってくれよ。」



柴田はもう目を閉じていて、山下が答えた。



仕方なく、私達は前の席に座った。





「おっ、石川、前に来たか。その方が酔いにくいからな。」



バスが走りだすと、先生に声をかけられた。




「ねえ…ひょっとして。 柴田、希のために席を譲ったんじゃないの?」



美穂が耳元でヒソヒソ話す。



「そっ、そんなわけないよ! あの席が…良かったんでしょ?」



平気な顔したけど、内心はドキドキで。



まさか、柴田が…



まさか… ね。




わざわざ変わってもらった、帰り道だったけど。



疲れで爆睡し、車酔いする暇なんてなかった。




みんなのお陰で、楽しい1日になったよ。








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