明日への扉
すぐ後ろから、声がした。



これは…私にかけられた声だよね。



振り向くと、少し息を切らした柴田が立ってた。




「何よ? 見たくて見たんじゃないから。たまたま通っただけ。別に誰にも言わないし。ていうか、あんなの今日一日で何回見たか、分かんないし。いちいち覚えてないっつーの!!」



自分でも分からないうちに、まくし立ててる。





「…なに、キレてんだよ。」


柴田の声は、対象的に冷静だ。



「別にっ! キレる必要もないし!」



…って、ホントに何で怒ってんの? 私。



でも、何かイラつくのよ!



柴田は黙って立ってる。



…そもそも、何故私を呼び止めたのか。




「…本当に、誰にも言わないから。ごめんね、邪魔して。 …私、塾あるから。」



沈黙に耐えきれず、方向転換して走り出した。





私が言いふらすと思って、口止めに来たのかな…



そんな事…できるわけないよ。




でも今日一日で、思い知らされた。



彼はモテモテの人。



私は何の取り柄もない、地味な人間。



告白したって… 相手にされる訳ない。






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