明日への扉
そして今日は本番。



一緒に踊れるのは、最後なんだ…



どうか、曲が途中で終わりませんように…






その願いは、聞き入れてもらえたようで。




篤史の手のひらに、ソッと手を当てた。





『ギュッ。』




…あ…れ?…



しっかり


握られてるんですけど…



右の手も、左の手も。




確認したくて、ちょっと手を動かしてみたけど。



それくらいでは離れないくらい、彼は私の手を掴んでる。




えっと…これは…えっと…



うつむいた顔が、だんだん熱くなる。




でも、そうしていられたのは10秒くらいで。



あっという間にチェンジ。



まさか、本番は全員の手を握ってるの?



どんどん離れていく彼の姿を追うけど、よく見えない。



えっと…あっ、あーっ、見えない!






「おい!ちゃんとやれよ!」



上の空の私に、ペアの男子が怒る。



「あっ…ごめん…」




そこで、曲は終わってしまった。




どうして、しっかり手を握ってくれたのか。




分からないままだ…









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