蜜愛

『嘘……うそ、でしょ?マサヤ……』

そう言ってその場に泣き崩れるあの女を、新しい彼女が追い払う。


罪悪感なんて、ない。

口数が多いあの女は、イチコのことを

とにもかくにも悪く言う。


……たしかに、僕も彼女に

『イチコさんに会ったりしないの?』

『イチコさん、元気だった?』

『お茶はどこでしたの?』


と、とかくイチコ、イチコと名前を出すことにイライラしていたのだろう。

もしかしたら、なんて

あの女が疑いはじめて、ちょうどいい頃合いだった。


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