蜜愛
そのボールを追いながら、

この感じ

どこかで……

と。


そして、

ああ、そうだ。


珠子とのセックスと似てるなぁなんて、

思ったりした。


俺が、

シーツのシワの波に
珠子のカラダを追っても。


波は珠子をさらって

手が、届かない。

指先は触れているのに。


掴めない。
捕まえられない。


珠子は、望まない漂流を続けていて、

俺は助ける事もできずに、

――むしろ。


思い通りにならない珠子を、


突き放しているんだ。


今も、このボールを、

波ごと揺らして

セイタの方へと、

押し付けている。


追いかけるのが面倒で、


押し付けているんだ。


セイタが拾えばいい。

例え足元が深くても、

夢中で追いかけてセイタが、

拾え。


――溺れても。



< 210 / 421 >

この作品をシェア

pagetop