蜜愛

息子とは、寝不足からの事故防止のために

海のそばに車を停めて一泊する予定で、はじめから来ていたので。

そのまま僕は

彼女から体を離す前に

一度だけ。

彼女に触れるか触れないかくらいの短いキスをしたら。

彼女をその場に残し息子の待っている方角へと去った。


僕なりの、計算。

僕なりの、復讐。


ちっさいけど、立ち去る後ろ姿なんてものを見せたかった。

彼女に短い喪失感を与えたかった。


前はまだ、旦那さんと僕を迷っていたのだろうけど

もう今は。


僕しかいない。

僕しか見えていないのだから。


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