蜜愛



―――目の前で。


あの女が沈みゆく様を私は見た。

誰もが、止めに入ろうとしながら、

その波の高さに恐れて

連れ添った者に引き留められて。


誰か助けるだろう

誰か助けないかな


自分以外の


“誰か”



そんなものに期待しながら

傍観した。
傍観していた。
そうするしかなかった。

皆、愛する人と一緒。


私だって。

そうだったはずなのだから。


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