蜜愛



娘が学校に行けば、私はすぐに女になる準備をはじめた。

洗い物はいつもの二倍のスピードで終わるし

いつも、洗濯洗剤の匂いが香る部屋の中は、私を中心にあの懐かしいフレグランスの香りが充満した。

マサヤと会う時にはよくつけていた香り。

――香りはすぐにあの当時の感情、状況を蘇らせてくれるから。


私はそれを疎ましく思い、マサヤと別れてから処分し、封印していた記憶とともに。

今はその効能がありがたく、もう一度手に入れた。


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