蜜愛



――少しずつ。

だが確実に。家にいる時間が少なくなっていくオレに、

イチコではなく蜜柑が責めた。


『パパ、いつもどこ行ってるの?蜜柑も連れてって』

『パパ、また海行きたいな』

『パパ、スキーやってみたい』

『パパ、もっと遊んで』

『パパ、なんでおうちにいないの?』

パパ、パパ、パパ、パパ、パパ、パパ……

そんな蜜柑の子供らしい訴えも

煩わしくなるばかりで。


オレは鞄に忍ばせた離婚届を出すタイミングを常に伺い、


結局ベストなタイミングなどないのだという結論に達して

唐突にイチコの目の前に広げた時。



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