蜜愛

イチコはオレが外した指輪をそっと自分の手元に引き寄せて、

二つ重ねた。

7号の指輪と15号の指輪が二重の円になって重なり、

イチコの指の細さを改めて思った。



『ありがとう、今まで。いろいろ』

『オレも世話になったよ。いろいろ』



テーブルの上。

彼女の指先で音をたてて指輪がはじけ、バラバラに離れた。

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