蜜愛
俺は、何も答えることができなかった。

願わくば、このまま俺も


言葉を紡ぐ脳の機能を失ってしまいたかったんだと。

蜜柑の肩に頭を乗せながら思った。

『なんか、懐かしい感じ。お兄ちゃんはよく子供の頃私にこうしてくれたのかな。どっかで嗅いだことのある匂い……』

そう言いながら、クスリと照れたように笑った。


『そうか、そうだな。そうだ…よ。俺たちは兄弟だから』


ーー兄弟だから。


何度も言い聞かせた。もう二度と俺は蜜柑のカラダを思い出せないように。


自分に、何度も。

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