蜜愛
ちょっと手を繋いだくらいでこんなドキドキして……


僕が童貞だってバレてるだろうな。

さっき年齢を言ってしまっただけに恥ずかしい。

彼女は僕と同じ年だというのに、色っぽいし落ち着いていて、

僕の知らないことをもっとずっと沢山知っていそうな気がした。



一年前の事故で彼女は

視力と、多少の記憶を失ったが随分戻ってきたんですと

そう、言ってた。


時々今の自分が、以前の自分と同じようになっているのか不安だと。


例えば、一人で河原にくるような女だったのかなんて、誰かに聞いてみたいけど違ったら怖いなと言って。

僕は、曖昧に頷きながら、右手は彼女の手を握り左手ではポケットの遺書をなでていた。

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