蜜愛
僕は、家出したあの日から僕の恋の御守りになった、

伸という父の遺書。
あれがポケットで熱を帯びるのを感じた。

そうだ……



海だ……



あ の 時 だ ……



『……んちゃーん!ミカンちゃーん!こっちこっち!!』


あの日海で会った少女を僕は


『 み か ん 』


と、はっきり呼んでいたじゃないか。


思い出したくない、辛い一日の記憶だったから。

すっかり忘れてた。


彼女が、“夏目 蜜柑”だった時の事を。


僕らは。

愛し合う僕らは

何度もあんな恥ずかしい事をした僕らは

“兄弟”…だったのか??


父さん、違うよな?

蜜柑は、『花咲 蜜柑』


父さんの子供なんかじゃ、ないよね?




――僕は、立ち尽くす。

何も聞けない。

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