蜜愛



−−今日で、しばらく会うのをやめましょ?


彼女は、僕から身体を離すとすぐにそう言った。

幻聴?
自分がいつまでもウダウダと言い出せない本音が聞かせた、幻聴だと思いたい。

僕は、つい、寝たふりをしてしまった。

でも彼女には、ばれているみたいだ。


−−ね、最後なんだから、きちんと起きて話しましょうよ?




こんなことなら。


さっき、湯舟の中で、彼女の頭ごと沈めて、息を止めてしまえばよかった。


僕は、覚悟していた事なのに、今更未練がましく、自分が勝手に期待していた事を彼女のせいにしてしまいそうになる自分に気付いて。


寝たふりを、続けるしかなかった。

ついでにこのまま、目をさましたくない。

……息子がいなきゃ、ほんと、死んでたかも。

とにかく今は、目をかたくつぶる。
彼女の腕を引き止めてしまわないように、とりあえず今は、

何も

見たくない。


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