キス屋
「...でも、してるじゃない?
 あたしの事、呼び捨てに」


「そう。何でか分かる?」


「...わかんない」


リョウスケはくすっと笑った。


内心、まさか、と思った。

あたしの事だけ、呼び捨て。

その特別感から期待は生まれた。


「俺は、好きだって思った
 子だけ呼び捨てするんだ。
 客としてじゃないよ?」



ーまた心臓は高鳴った。


からかってるのかな?


半信半疑だ。


でも、でも、でもー




「ねえ、もっかい聞くから
 ちゃんとこたえて?」




リョウスケはあたしに
正面からいってきた。







「恵愛は、何で俺に
 あいにきてるの?」







どうしたらいいの、

どうしたらー...








あたしはまた俯いて、
ちいさくつぶやいた。







「すきだから...」






その瞬間、リョウスケは
あたしをぎゅっと抱きしめた。





夏の暑さより、人の
温もりの方が気持ちいい。





初めて知った夜だった。
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