ヴァンパイアに、死の花束を
今日の学校は、少し風邪ぎみだったこと以外は、落ち着いた時間を過ごせた。

4時限目の陣野先生の英語の授業はドキドキだったけど。

先生は特にわたしや穂高と目を合わせるでもなく、いつも通りの授業を淡々とこなした。

穂高に問題文の英訳をさせた時は、かなりドキっとしたけど、穂高も顔色一つ変えずに流暢な英語を披露した。

穂高の流暢な英語を聴きながら、そういえばイギリス出身だもんね、と納得した。

あんなにいがみあってる二人が普通に英語の授業で同じ教室にいるなんて、信じられない光景だけど。

それよりも、一つの教室に3人もヴァンパイアがいるなんて、みんな知ったら驚くどころじゃないよね。

今日こんなに落ち着いた学校生活を過ごせたのも、古河泉水が学校に来ていないからだった。

泉水に会おうとして、彼女が今日は体調不良で休んでいることを知った。

泉水に早く会って、彼女の気持ちを訊きたい。

そして、『イヴ』に取り込まれて死ぬなんて馬鹿な考えはやめてもらうんだ。

放課後。

教室の掃除をしているわたしの横で、明日美やバスケ部の男子が穂高を取り囲んだ。

「浅見くん!バスケ部一度でいいから見学に来てよ!その才能を見てしまったからには、わたしは引きさがりませんからね!」

明日美が少し興奮した様子で穂高をバスケ部に勧誘する。

明日美、昨日穂高のバスケ見てから落ち着かなかったもんな。

「悪いけど…」

そう言おうとした穂高の腕をむんずと引っ張って「見るだけだから!」そう言って廊下へ出ていく。

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