ヴァンパイアに、死の花束を
陣野先生の瞳をじっと見つめながら、息苦しさで唇を開く。

……気だるい。

息が苦しい………。

血の匂いに、頭がおかしくなりそうだ。

陣野先生はわたしの手首の鎖をはずすと、細く長い指先でわたしの唇に触れた。

「…お前の望むものは…何だ?」

………わたしの…望む……もの…?

陣野先生の指が開いたわたしの唇から少し奥へ入ると、プツリ、と音をたてた。

舌の上に流れてくる……濃く甘い蜜の味。

………牙だ。

自分の歯が、鋭利な吸血鬼の牙に変わったのを悟った。

その牙に指を押し当て、蜜の味をたらした先生の指をわたしは舐めるようにくわえた。

『イヴ……お前の求めるものは…何だ?』

一千年のはるか昔から、その声はわたしに語りかける。

チュル…と指を吸いながら、深紅の瞳で『鬼』を見上げた。

『イヴ……お前の欲しい男は…誰だ?』

一千年のはるか昔から、『イヴ』が求めたその男。

チャリ…と手元に落ちていた鎖を拾い、『鬼』の首にかける。

そのまま鎖をグイと引き、『鬼』の首を口許に引き寄せた。

『鬼』は能面のように無表情のまま、もう一度、言った。

「『イヴ』…お前の望むものは…何だ?」




………ガツリ……………!!!!



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