7年目の浮気
ふと足を止めた。

そこは自身の会社の前だった。

なんで会社に来ちゃったんだろう。

茉莉花はかばんを探り、加藤の名刺を取り出す。

思考が働かない。

加藤に、電話をかけた。


「…はい。もしもし。」


加藤の声だ。


「…。」

「もしもし?」

「あのっ、…。」

「篠原さん?」


自分とわかってくれた。

そのことが嬉しくて、なんだかほっとして、急に涙が出てきた。


「かと、くっ…!」

「篠原さん、今どこ?」

「かいしゃの、ま…え」


すぐ行くから、

加藤はそう言った。

茉莉花は待った。

加藤が駆けつけてくれるのを待った。

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