加納欄の合コン シリーズ10
加納欄の合コン シリーズ10
大山先輩が、お弁当を持って戻って来た。

「国分戻ってきたか?幕の内なかったから、ノリ弁にしたぞ」

雨の中、車で張り込みだった。

「ありがとうございます。動きないです。女性が1人、通っただけです」

「了解。先に食っていいぞ」

そう言われて、あたしは、先に昼食をとることにした。

あたしは、無言で食べていた。

「今日、行くのか?」

大山先輩が、国分のアパートを見たまま、唐突に聞いてきた。

「え?」

「祥子に誘われたんだろ?」

「え?あぁ」

実は今日、毎度のことながら、突然、飲みに誘われたのだ。

しかも、よくよく聞くと、合コンらしく、1人行けなくなったから、どうしても!と、頼み込まれたのだ。

あたしと、大山先輩の関係は、相変わらずで、何の進展もないまま、あれから数ヵ月が経っていた。


あたし大山先輩のこと”嫌い!”って言っちゃったしなぁ~(:_;)


あれから大山先輩も、何にもアクション起こさないし……。


だいたい、あの時のキスも、何がなんだか……。


結局、あたしと、大山先輩は、何事もなかったかのように、毎日を過ごしているのである。

「……まだ、決めてないんですけどね」

「いいじゃねぇか、行ってこいよ」


行ってこいって、おっしゃいました?


あたしは、さりげなく、大山先輩を見た。

「いいんじゃね?」

大山先輩は、繰り返した。

「い、行って、いいんです、か?」

「出会いのチャンスじゃねぇか」


で、出会いのチャンス、ですってぇ。


う~(>_<)


「そうですよね!出会いのチャンスですよね!わかりました。行ってきます!」

あたしは、不機嫌になっていた。

「何、怒ってんだよ」

「べっつにぃ(>_<)ご馳走様でした」


ハァァァ。


むきになっても、しかたないのはわかってるんだけど……。


「欄、国分だ!」

「え!」

大山先輩の声に、あたしは、慌ててお弁当の容器をビニールに突っ込み、車から飛び出した。

大山先輩は、もう、国分を捕まえに、車から出ていた。

雨の中、走って国分に近づいた。


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