エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
「火菜、大丈夫か?」

思いのほか火菜の受けたダメージは大き過ぎた。

とりあえず落ち着くまでの措置として、森が命の両親と話しをする事にした。

先程、バスも完全に停まってしまって命の両親は日を改めようにも台風が遠ざかるのをココで待つしかないのだ。

それに、どうやら自分たちが手を貸して連れて来た少女が、皮肉な事に息子と息子の彼女に災難をもたらした事実だけはハッキリと判っていたので松下夫妻にもすべてを知ってもらった方がいいだろうと森と命でそう判断した。

そして、森と松下夫妻は談話室で話す事になった。

命は火菜とトレーニングルームにいた。

シャワーを浴びて少しは落ち着いた火菜だったが、それは亜梨砂の襲撃からの恐怖に対してで、現実には“ケータイ”も“ペンダント”もどちらも火菜の命綱でそれらを無くしてしまった恐怖はより大きく、深く火菜の心を脅かしていた。


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