エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
決着

台風は日本列島を縫うように北上していた。

関東地方も免れる事なく、上陸した後の巻き返しの風が今また強く吹き出していた。

この分では後1〜2時間は外出もままならないようだが、女たちは必死に戦っていた。

未来の母は、何度か停電に見まわれながらも、必死に電話を掛けまくって梓の行きそうな場所にたどり着いた。

後は、台風が完全に過ぎ去ってから、そこを訪ねるつもりだ。

ただし、今日は夫が海外に主張中なので、一人でアリサに対抗出来るかが不安だった。

しかし、そんな弱気は捨てて、立ち向かわないとと、強風でガダガタ軋む窓枠を見ながら自分を鼓舞した。

どうやらアリサは昨日から家に帰っていないらしい。

それでも別段、気にかける様子もないアリサの母の投げやりな様子に心が痛む児島の母だった。


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