エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
しかし中条の妻の美佐子は、中条以上に冷酷で非情な女だった。

中条の死とともに私達をある男達に引き渡そうとした。

それはおっちゃん(源)が『死ぬよりツライ事』と表現した通りかなり残酷な仕打ちが用意されていたようだ。

あの時 あの男たちに連れて行かれていたらどうなっていただろうか…。

世間から隔離され、まだ15年しか生きてない私でもそれはかなり危険な事だったと確信している。

どこかに売られて、恐らく体はバラバラに引き裂かれ、まるで家畜のような扱いを受けた挙げ句に最後はもがき苦しみながらの“死”が用意されていたのではないか…。

でもなんで私達はいつもつらい目にあわされなければならないの!?

今までだって十分に辛かったよ。

…苦しかったよ。

勇が居てくれたからなんとか生きてこれたのに…。

それなのに私だけが助かり、一緒に逃げるハズだった勇は母の弥生さんを助けに行ってそれっきりとなってしまった。


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