ことばのスケッチ
(2)「ことば」の誕生
    (1)
 私にも孫ができた。母親の胎内から出て、初めての外気に接し、手足をしきりに動かしながら「オギャー」と産声を上げた。この産声には、環境のあまりの違いに不安になって、救いを求めているのか、それとも生を受けた歓喜なのか、そのときから心が生まれて、ことばが始まる。
 生まれたばかりの時には、まだ目が見えない。暗闇の中で手足を動かしても、母親の胎内にいた時のように、手足に触るものもない。一体自分は何処にいるのだろう。そう思った時に、体がふわりと宙に浮いて、なんだか生あったかいところに下ろされた。母親の胎内にいた時に似ているが、どことなく違う。一応ここは何処だろうと「オギャーオギャー」とニ三度声を掛けてみた。
「まあ、元気な泣き声だこと」
「チョット、お湯の温度が高いかしら」
「まぁ、可愛いわね」
「この子誰に似ているのかしら」
「この子指が長いわね」
「きっと、ハンサムになるわよ」
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