ことばのスケッチ
「そうだと思う。だけど、我々の常識と言う物差しが、部長にとっては非常識だからしようがないね」
「部長の言いなりになれということですか?それじゃまるっきりゴマ摺りじゃないですか?」
「傍目にはそう見えるかもしれないね。だけど、部長との間で心の駆引きがあれば、ゴマ摺りじゃないと思うよ。時々、押印が逆さまになっている書類を受け取ることがあるけど、その仕事をしたその人の気持ちまで解ることがある。仕事に対するその人の姿勢がね。やはり真っ直ぐに押印されている方が、受け取った方も気持ちがいいものね」
「そうかも知れない」と、同僚は小さく答えた。
「毎日顔をつき合わせて、むしゃくしゃする気持ちを与えてくれる部長様、有難うございます。今日はどんな環境を与えてくれるんですか、アッははて言う気持ちかな。心の駆引きって言うのは」
「部長は歳をとっているけど、あれは子供だよ」同僚は笑いながら言った。
「いいこと言うね。小さい幼稚園児に、悪口を言われても腹を立てないからな」
「そういえば、腹は立たないね」同僚は初めて納得したように言った。
「どうして腹が立たないんだろう?」
「そりゃ、相手は小さいからさ」同僚は説得するように言った。

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