神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
透が見つめる中、朱色の幕を開いて出てきたのは予想した通り安倍晴明だった。

彼は牛車を降りると、御者にしばらくここで待つようにと指示を出して歩き始めた。


透は晴明の後ろを追いかけるようについていった。


(この時代の帝は誰だっけ?晴明が居た時代は帝が移り変わりが多い時代だったような…確か村上天皇や花山天皇の時代だ。)


そんな事を考えながら進んで行くと、いつしか晴明は門番付きの大扉の前に立っていた。


門番は晴明の姿を確認すると、一礼した後に扉を開いた。


「どうぞ中へ、葉明殿も先程お着きです。」


「ああ、ありがとう。」

晴明は軽く頷くと帝の待つ部屋へと入って行った。
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