生徒会長様の憂鬱




「……、で?お前が鈴夏に全く歯がたたなかったわけだ」




「違う!お前俺の話聞いてた!?」



「聞きたくなくても耳に入ってくるからな」



「俺が言いたいのは、俺と姐さんはパンツまで見た仲というこった!」




閉店間際のラーメン屋で、テーブル席をせっせと拭きながらも耳も塞ぎたくなるような大声でそう叫んだ雅則を冷めた目で見つめるのは、カウンター席に座り水を飲む冬真だった。





「パンツ見た仲じゃなくて、お前が勝手に見たんじゃねーか」



「そーゆー事が言いたいんじゃないんだよお兄さんは!お前なんてまだ出会って一年経ってないだろ!俺は一年間姐さんと過ごしてきたんだよ!俺は姐さんの事お前より知ってんだかんな!」




「お兄さんって、同い年だろ。大体お前はただのバイトじゃねーか、俺はあいつの恋人、あいつの事知ってるに決まってんだろ」



冬真は彼に取り合う気もないようで、小さいブラウン管から流れる報道番組へ意識を移す。



「なっ…!お前まさか姐さんのパンツの中身を見、」



「マサ死ね!」



「ガフッ!」





興奮気味に布巾を握りしめ冬真に詰め寄ろうとした雅則の頭部に、大きな灰皿が飛ぶ。
鈴夏の怒鳴り声と同時に鈍い音が聞こえ、崩れ落ちていくしがないバイトの姿を横目で確認した冬真は、ご愁傷様と言わんばかりに目を閉じた。




「ったく!ちょっと目を離した隙に変な話して…」




過去の話をされたのが恥ずかしいのか、鈴夏は少々頬を赤く染めながら雅則に歩み寄り、完全に伸びた状態の彼の首根っこを掴む。




「俺は楽しかったけど?お前の事が知れて」




さらっと、冬真が通り過ぎる彼女に告げると途端に顔を真っ赤にし、逃げるように雅則を引っ張ったまま階段を駆け上がっていった。



うっさい!


と憎まれ口を叩いて。





こちらの気持ちを隠さず見せると、普段の乱暴さが嘘のように“女”になる。
冬真はすっかり味をしめていた。



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