生徒会長様の憂鬱





「だから、トーマにはかんけーないじゃん!」



「関係云々の問題じゃねーだろ、お前はホントに…」





要冬真と、海ちゃんが喧嘩をしだして10分になろうとしている。
私はそれをソファーで眺めながら先程ハルから貰った飴を口に含んだ。



「かんけーないもん!あたしが誰と遊びにいこうと誰にもかんけーないんだから!」




そして。
海ちゃんの一方的なまくしたてにより生徒会室の扉が強引に開かれ彼女が出て行った所で喧嘩は強制終了。




「…ったく。慧、行ってこい」



それを冷めた目で見送って椅子に背中を投げると、私の隣で無視を決め込んで進路に関する資料を見ていたユキ君を顎で使うようにして送り出した。


ユキ君は数秒間不服そうに顔を歪めたが、反論する気はないようでゆっくり立ち上がって開きっぱなしの扉をくぐり抜ける。

控え目な音と共に、室内に妙な空気が流れた。



気まずい。




何これどうすんの私は要冬真のお守りをすればいいの?


「…」



不機嫌に眉を顰める要冬真を遠巻きに眺め、シワの数を確認する。


イチ、…1本か。




怒ってるというよりは気に食わないというオーラ。

とりあえず、理不尽に駆り出されたユキ君の為にも彼が海ちゃんを連れて帰ってきたころにはあのシワの数をゼロにせねばなるまい。




「…、なんだよ」




そんな決意の視線に気付いたのか、ソファーの背もたれから顔半分だけだして彼を観察していた私に、要冬真は視線を投げた。




「えーっと…、飴いる?」



「いらねー」




餌付け失敗!!!



チッ…!ダメか!
ふいっと顔を逸らされショックを受けたが、次の作戦を考えながら要冬真を観察していると、その視線に耐えきれなくなったのか、彼はもう一度私を見た。



「…別に機嫌が悪いわけじゃねーよ」



「…」



「なんだよ」




要冬真は怪訝な顔で手にしていた書類を机の上に置いた。
声色は、少し戸惑い気味。


これは良い機会だ。



ずっと気になっていた事を聞くチャンス!

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